メディアコングロマリット
バイアコムは、米ハリウッド映画大手(メジャースタジオ)のパラマウント・ピクチャーズを傘下に抱えていた。ケーブルテレビのMTV(音楽専門)など19局を持っていた。さらにビデオ・レンタル大手のブロックバスターなどを保有していた。さらに、テレビ・ラジオ放送局のネットワークで屈指のCBSを手に入れ、世界有数の巨大エンタメ・メディアコングロマリット(複合企業)が誕生した。
業種 | 会社名 | 映画 | パラマウント |
---|---|
ケーブル放送 | MTV(音楽専門局)、ニケロデオン(子供向け番組専門局) |
地上波 | CBS |
レンタルビデオ店 | ブロックバスター |
株式時価総額800億ドル(約8兆8800億円)
バイアコムとCBS両社の合併は、事実上はバイアコムによるCBSの吸収だった。バイアコムとCBS両社合計の株式時価総額が実に約800億ドル(約8兆8800億円)になった。サムナー・レッドストーン会長はこのとき76歳だった。
新会社の会長兼最高経営責任者(CEO)となるバイアコムのサムナー・レッドストーン会長はニューヨーク市で記者会見を行った。その席上、「このとてつもないメディアの巨人の誕生が、米国内および全世界で起きる(メディア産業の)爆発的成長の新時代を告げる」と語った。
メディア業界のM&Aブーム
しかし今回の合併劇は、さほど業界を驚かせたわけではない。むしろ、1990年代のメディア業界で起きたM&Aブームの1コマにすぎなかった。幕開けは1990年1月、出版最大手のタイム社と映画製作・配給を中核とする総合娯楽大手のワーナー・コミュニケーションズの合併だった。
1996年2月、娯楽王国を誇るディズニーが3大テレビネットワークのABCを買収した。これを追いかけるように、タイム・ワーナー社が1996年10月、CNNを擁するターナー・ブロードキャスティング・システムズを手中にした。
映画館経営者のサムナー・レッドストーンが1987年に買収
一方、バイアコムは、そもそもCBSの子会社だった。ネットワーク局がケーブルテレビを所有することを禁じる法律により、1971年に独立した。それを映画館経営で成功をおさめたサムナー・レッドストーン氏が1987年に買収した経緯があった。
レッドストーン氏が経営権を握ったバイアコムは、1994年にパラマウント映画を買収。娯楽・メディアの複合企業として急成長した。そして、1990年代の法規制の緩和もあって、元の「親会社」であるCBSを事実上買収した。
株式投資リターンがディズニーやワーナーを上回る
バイアコムは米メディア界の台風の目だった。1987年にレッドストーン氏がバイアコムの経営権を掌握して以来、バイアコム株への投資リターンは、米メディア業界の“2強”であるウォルト・ディズニーやタイム・ワーナーを上回った。CBS買収が完了すれば、規模の面でも2強を追撃する体制が整った。